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ドイツ・フライブルク市在住のジャーナリスト、コンサルタント(エネルギー・交通・まちづくり) 村上敦

ドイツMV州・風力発電事業に住民の資本参加を義務付ける法について

ドイツで再生可能エネルギーの推進、およびエネルギーシフトに対して、国民の受容度が高いのは、基本的には地域の市民出資による市民エネルギー組合だとか、合資会社だとかで、風力発電や太陽光発電などのプロジェクトを、その地域に住んでいる住民自体が推進しているケースが、日本と比較して、飛躍的に多いという理由もあります。

日本でも、ドイツでもポテンシャルの高い太陽光や風力による発電は、従来型の化石燃料などと比較してエネルギー密度の低いエネルギーを利用することから、それを収穫して、ある一定量の規模で使おうとすると、これまで海岸沿いにポツン、ポツンと設置してあった火力・原子力発電所が必要とした土地消費量をはるかに上回る土地が、全国に面状に必要になるという性格を持っています。

ということで、ピンポイントでの地元対策だけではなく、全国面状に再エネの推進に対する市民、国民の受容度を高めないことには、大きな規模での進展はありえません(もちろん、民主主義的にやらないなら、何でもありなんですが)。 

ということで、一部の事業者(往々にして、大都市部に立地する大企業や裕福層)だけが、FITによる(再エネ設備設置による)利益を享受し、FITの賦課金は国民が横並びで負担し、同時に全国津々浦々再エネ設備の負の影響(土地消費、景観の変化、騒音、自然破壊など)を国民が受けるようになると、どこかの段階で「再エネの推進=悪」という社会正義が出来上がってしまうことになります。

そうした意味では、今の日本はこれ以上想定できないほど最悪の路線を一直線で進んでいるように見受けられますし、ドイツはそうならない道を常に(妥協しながらも市民の抵抗で)選択して、進んできたように観察できます。 

その王道が、再エネ設備が立地する場所の地域住民が、その再エネ設備に投資し、利益を享受することで、受容度を高めるという取り組みです。

 

とはいえ、こうした市民出資、市民組合による大規模・営利プロジェクトという経営精神と強い自助精神を必要とする取り組みは、ドイツのどの地域でも、同じ強さで行われているわけではなく、とりわけ南部では強いですが、旧東ドイツや北ドイツでは弱いという傾向があります。

ということで、政治的に、今まで以上に市民による投資参加を促したいメクレンブルク・フォアポメルン州(MV州)では、ドイツでははじめてとなる以下のような法律を施行しています(チューリンゲン州でも検討中、デンマークがお手本)。

http://www.landesrecht-mv.de/jportal/portal/page/bsmvprod.psml?showdoccase=1&st=lr&doc.id=jlr-WindPB%C3%BCGemBGMVrahmen&doc.part=X&doc.origin=bs

この法律は「ウィンドパークへの自治体・市民参加法」と名付けられ、20165月末から施行されました。 

具体的には、この州内で風力発電を開発する事業者は、

①投資総額の最低20%を地域出資に(風車から直線距離で半径5km以内に居住する住民に10%+風車設置から5km以内に領土を持つ自治体に10%ずつ)提供しなければならないことが義務付けられています。また、市民出資の場合、一口は500ユーロ以下にすることが決められています。

②対象は高さが50m以上の風力発電

③そして資本参加の提供ではなく、代替案としては、

・自治体の同意があれば、風車設置から5km以内に該当する自治体が毎年一定額の支払い(この風力発電事業で得られる利益の10%)を受けることで免除されます。

・市民に投資参加を促さない場合は、該当する地域住民に対して貯蓄商品を提供することで免除されます。例えば、風力発電事業者は利益の10%を毎年適当な銀行に一旦預入します。その銀行は、該当する5km以内の市民がそこで定期預金を組む場合(310年で満期とする元本保証)、その利子を、毎年繰り入れられる風力発電からの利益で支払うことになりますので、かなりの利回りが期待できるという仕組みです(かつ、リスクが少ないので、投資に慣れていない市民も利用しやすい)。

http://www.regierung-mv.de/Landesregierung/em/Energie/Wind/B%C3%BCrger-und-Gemeindebeteiligungsgesetz

もちろん、風力発電事業者の所有権を侵害する可能性の高い法律ですが、同時に、これによって風力発電への地域住民の受容度が高まるなら、反対運動などにあって、計画が遅延したり、最悪中止になるようなリスクを低減させることができます。

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もう、こういうの日本でも即時に必要じゃないでしょうか?

日本では、乱暴な方々が全国各地ですでに暗躍していますから、あと5年もすると、(メガソーラーと同様に)国中が風車反対だらけになりそうです。